2012-01-12 Thu
列車に揺られ、昼夜をまたいで毎日そう代わり映えのしない流れる風景を眺めて大陸横断の旅をしているような気分だ。


朝起きて、寝ぼけまなこで野菜ジュースを飲み、コーヒーをすする。
飲み過ぎ明けには、インスタントのお味噌汁を飲んだりする。
お風呂を温めなおしてる間に今日すべきことを書き出す。
テレビはモコミチくんのキッチンコーナーまで観たら消す。
たまにテリーさんの顔まで観たりするが。

ジョグを決めている日には、起きて三十分後ぐらいにスキンズに着替えて走りに出る。
スキンズにジャージを羽織っただけのカラダに、空に透かした羽毛のような色合いに見える白色の冬風が沁みる。
けれど、坂道を十分ほど走れば、すぐにカラダの芯からの熱で上半身は暖かくなってくる。
気づけば背中には汗をかいている。
アスファルトをけり、街から街へ、1時間10キロほど走り、最後に出勤へ向う人々がひしめき合う交差点を横切り、遊歩道を抜け、小さな公園でストレッチをする。
花壇の柵にかかとを乗せてバレリーナのように足を伸ばす僕を、老人や小学生が不審そうに眺めては、出口へと消えていく。

家に戻り、温め直しておいたお風呂に浸かり、ふくらはぎをたんねんに揉み、頭を洗い、シャワーを浴びる。
時々シャワーの中でメロディーや言葉が浮かぶ。
そんな時には濡れた裸のままでピアノの部屋に行ってレコーダーをまわして鍵盤の前に座る。

ドライヤーで髪を乾かし、イスに出しておいた服を着て、電気のスイッチを消し、革ジャンを羽織り、玄関を出る。
出がけの動きに余分なことはいっさいなく、ただ黙々と針を刻む壁掛け時計のように、スタジオへと向かう。

鞄はもたない。
メモ帳になりそうな白紙を何枚か折り畳んで、小さな三色ボールペンと一緒にポケットに入れて持ち歩く。
左の尻ポケットには財布、右ポケットには本を突っ込んでいる。
移動の時はその本の世界に入って過ごす。
年明けは『ハードロマンチッカー』という本の続編を読んでいた。その次には銀色夏生の『つれづれノート』を久しぶりに読み直した。
今は村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』という本を読んでいる。

一日の始まりの食事のメニューもほぼ決まっている。
スタジオへ向かう途中にある富士そばで食べるか、スタジオ近くのミニストップのお惣菜かサラダ、もしくはスタジオ隣のお米屋さんが出店しているオニギリ屋さんでオニギリと唐揚げを買って食べる。
そして、道をまたいだ100円オンリーの自動販売機で缶コーヒーを飲む。

スタジオに入ってからは、向き合う音楽のこと以外何も考えない。電話もほぼ無視してでない。休憩もしない。
なんとかたぐりよせた、
向こう側に在るイメージの世界とこちら側に在るクリエイティブの世界をつなぐ糸が切れないように、作業に没頭する。
時に腕をくみ、時に頭をかき、時に声をあげ、時にほくそ笑み、時に大きく頷きながら。

作業が終わり外へ出れば、あたりの会社やお店の明かりはもう消えている。
寒さに身を縮めながら、あてもなく出会いを探す猫のように路地を抜けて、地下鉄の入口へと向かう。
帰路を辿り、コンビニで缶チューハイを買い、音の世界との密会に興奮したままの感性を冷ますようにそれを飲みほし、ベッドに横たわる。


そんなふうに、
今日も続いている、

僕の毎日だ。

はじめに綴ったように、
列車の窓際の席に座り、
代わり映えのない景色を眺め、
長い長い旅をしているような毎日だ。
けれど、
何かが、
この毎日にはある。
代わり映えのないように見えているけれど、
前へとゆっくり動いている、
なにかの気配がある。

途方もなく遠く、
まだその姿は遥か彼方にあって見えないけれど、
確かにそこに在る目的地に向かって回っている車輪の音が、
僕には聞こえている。
| 17:20 | CATEGORIES:スケッチ |
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