2008-03-23 Sun
日曜の朝を行けば、車の通りもなく人気もなく、
自分だけの朝のように思えて、気分は神々しく、
春近しと言えでも、頬に当たる風はまだ冷たく、
それもそれで、すがすがしく。
光に覆われた空は、やや黄色みがかって、
その眩しさは、水たまりに反射する黄昏のように美しく。

逆行にシルエットで浮かぶ木の葉を持たない街路樹たちが並ぶ道を
ただひたすらアスファルトを蹴り上げ、走る。
多分弾んでいる自分の息は、僕には聞こえない。
耳にかぶせたヘッドフォンからは、
暴れるドラムの上を光の粒が降り注ぐかのようなエレキギターの
アルページオのリフが絶え間なく響き、その隙間を縫うように優しげな声が歌っている。

いつから走ることを覚えたのだろう。
初めて走ったのはいつだろう。

そんなことを、ふと考える。
けれど、次の瞬間は、また違う思考が頭を巡る繰り返し。


僕の街は坂の街だ。
上ったり、下ったり。
走ることには適してない。
けれど、この場所しか走る場所がないから、
この場所を僕は走る。

今までいろんな坂道を歩いたなと、ふと考える。
ピアノ教室があった裏道の坂道。
親しかった女の子の家があった坂道。
下に大きな道路が通っていた陸橋のように続く坂道。
山の上の校舎まで延々と続く、
生い茂る木々に覆われたいつも日の射すことがなかった坂道。
いつでも風が強く吹いていた長い長い坂道。


暖まってきた身体に巡る血球が、
思考の粒を乗せて頭から爪の先までもを急激に巡る感覚に襲われる頃、
足下に伸びていた自分の陰の長さが少し短くなっていることに気づく。
やがて、自分で作ったランニングコースの最終地点の目安になる
コンビニエンス・ストアが見えてくる。

何も考えてないで走る時ほど、
疲れや辛さを感じるのだけれど、
こうして、
何かを考えながら走っていると、
あっという間に時間が過ぎて、
到達地点にまで辿り着いていたりする。


曲がり角を曲がると、
白い貝殻のような形の花を満開につけた木々を見つけた。
なんていう木なのかな。
なんで、この木は、今の季節、咲いているのかな。
日差しの当たりが良いのだろうか。
どこかの街で、
あたたかい南風の到来を春の到来と勘違いして咲くサクラがあると、
聞いたことがある。
そんな感じだろうか。
それとも、
生まれてからずっと、
この木は、誰もが咲かないこの季節に咲くことを、
決められているのだろうか。


大きな歩道橋が見えてきて、
今日のランニングは終了になった。
「ドクッ、ドクッ」っと、それは陳腐な例えだけれど、
まさに、「ドクッ、ドクッ」っと、
身体の中からまだまだ溢れ出して走ろうとするエネルギーを感じながら、
ゆっくりとペースを落として、歩き出す。

気づけば、空に広がる黄色みがかった光が、
街中を包み始めていた。


今日は、ミーティング。
シャワーを浴びて、コーヒーを飲んで、
サラダを食べて、言葉暗記をして、映像編集をして、
出かける準備をする。


| 08:26 | CATEGORIES:考える人 |
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