2009-05-20 Wed
電車に乗って街に出た。
アブリルみたいな格好をした女の子と小さく折り畳んだ新聞を窮屈そうに読んでいる
グレーのスーツのおじさんの間に腰掛けた。
座ってみると、隣のおじさんが何故そこまで窮屈そうにしている理由がわかった。
鞄から今日のインタビューの内容が書かれている紙を取り出し、
僕も隣のおじさんと同じように窮屈そうに身をちぢめながら、それを読んだ。
耳に入ってくる音が何も聞こえないほど集中してそれを読んでいた頃、
乗り換えの駅に着いた。
人でむせかえる階段を昇っていた時に、前を歩いていた紳士風の年配の方の足が
僕の足にほんの少し当たった。
その人は振り返って、「すみません」と頭を小さく下げた。
僕は少しだけ驚いて、「いい人だなぁ」と思った。
ここ最近、駅の構内で僕の足や肩にぶつかってきた人たちは数えきれないほどいたけれど、
「すみません」と改めて謝られたことはなかったからだ。
人にぶつかって謝ることは当然のことなのだけれど、
「本当にいい人だ」と何遍も思った。
ふと、昨日今日と考えていた事柄が頭に浮かんだ。
「自分も含めて、本当に人間て勝手だよな」ということ・・

それぞれの人間にはそれぞれの生きてきた経験がある。
それぞれの人間にはそれぞれのこだわりがある。
それぞれの人間にはそれぞれなりの物事への感じ方や捉え方がある。
何かに対して、僕から見た誰かがとった行動が理解できなかった時、
「本当に勝手だな」と思うこともしばしばある。
逆に、誰かにとって、僕がとった行動や言動から、
「勝手な奴だ」と思われることもあるかもしれない。
人間はそれぞれ皆違う。
感受の仕方も物事を解決していくやり方も違う。
けれど、
僕らが生きている世界の中で、人間は一人で生きているわけじゃなく、
学校においても、会社においても、バイトの場所においても、
たくさんのコミュニティーの場において、
そのそれぞれ違う観念や概念を持った人々が、寄り添い合い生きている。
一日の間にそれほどぶつかりあうこともなく、いつも争いあって暮らしているわけでもなく、
ほとんど大抵の日々は和やかに過ぎていく。
「なぜなんだろう」
そんなことをずっと考えていた。
その答えは、どこかの政治家が口にしていた”友愛”とかいうやつとか、
適当にまるで流行歌のように僕らが口にする"愛"とかいうやつとか、
そういうことではなく、
きっとそれぞれの人々が心の奥のほうで密やかにそれぞれのやり方でとっている
何らかの解決方法があるからこそなのだと思う。
その何らかの解決方法ってどんななのかなぁ・・
そんなことを2日間ずっと考えていた。
それを唄にできたらいいなと思っていたからだ。



目的の駅に着いて、目的の場所に向かった。
気持ちのいい風が吹いていたせいか、目に映る風景が全て平和に見えた。
談笑するサラリーマンたち、着飾ったマダム風の女の人たち、
信号待ちをしているカップル・・皆、幸せなんだなと思った。
交差点を渡りきる時、ベビーカーを押す奇麗な女の人とすれ違った。
日差しの下で白いワンピースをなびかせて歩くその姿に、
「きれいだな」と思いながらその人の顔を見ると、険しく眉間にしわを寄せていた。
・・皆、大変なんだなと、先ほど感じた思いとは逆の気持ちが湧いた。

小さな橋を渡り、街路樹が植えてある曲がり角の前に来た時、
懐かしい気持ちがこみあげた。
蘇る風景。蘇る歓声。蘇るあの高揚感。
曲がり角を曲がって、目的地に着いた。
今日のインタビューがあるライブハウス。
重いドアを開けて、階段を昇った。



| 13:22 | CATEGORIES:スケッチ |
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