染谷俊 TOUR 2011「One For All」

5/15(日) 大阪Shangri-La ライブレポート


大阪梅田。最高気温は25度。
快晴という訳では無いが、灰色の雲を通して、太陽の熱がじんわりと伝わってくる陽気。
暑いながらも、爽やかな風が吹き込んでくる、気持ちのいい日だ。

開場一時間前。ツアー初日を飾るライブハウス、梅田Shangri−laの前には、既に列が出来ている。みんな、笑顔だ。ワクワクが、表情から伝わってくる。その列に向かって今回は、突撃インタビューを行わせて頂いた。
会場に駆け付けた方々は、地元大阪・兵庫から、愛知、広島、千葉、東京、神奈川と、正に日本全国からといったところ。
『今日は何を楽しみに来ましたか?』という質問に、一番多く上がったのは「パワーを貰いに!」という嬉しい答えだった。「染谷俊自体がパワースポット」「笑顔を見て元気が貰える」など、高い歌唱力・演奏力はもちろん、彼の人としての魅力に惹きつけられている方が多いようだ。
では、『染谷俊の魅力はなんですか?』という質問には、無限に回答が寄せられた。一部をピックアップすると、「がむしゃらさ」「何事にも妥協をしないところ」「まげないところ」といった、やはり彼の内面によるものから、「歌と言葉」「その時の自分の気持ちにハマる曲が、必ずある」など、音楽に対するもの、「照れた時の笑顔」といったものまで、本当にさまざま。要約すると、皆さん染谷が丸ごと好きなようだ。
『染谷俊のLIVEはどうですか?』の質問には、「LIVEが最高なアーティスト」「老若男女関係なく、今大変な人に見に来てほしい」「好き・嫌いがあっても、何も感じない人は絶対にいない」という、LIVEに対するオーディエンスの熱い想いが多く語られた。

様々な想いを胸に、17:00開場。

楽屋を覗いてみると、染谷は今日受け取ったプレゼントを、ひとつひとつ、手に取っていた。
誕生日プレゼントを貰った時のように丁寧に開封し、手紙をじっくりと読んでいた。染谷とオーディエンスの間には、物のやり取りではない、心のやり取りがあるようだ。

ホールへ下りてみると、続々と入場していく人達から、受付前に並ぶ物販コーナーを見て、「かわいい!」と歓声が上がる。今回のツアーのオフィシャルTシャツだ。ピアノから無数のハートが溢れ出て、それらがまた大きなハートを形成しているデザイン。染谷の溢れ出る音楽に対する想い、メッセージ、ツアーテーマがPOPに表現されている。


また、今回は特別な試みとして、震災に向けたチャリティーグッズも販売している。
『One For All/SHUN SOMEYA』という文字が印刷されたラバーバンド。これは売り上げの全てが東北関東大震災へと寄付される。物販の後方でも、有志による募金活動が行われた。更に、受付でもショートストーリーの冊子が配布された。この「ヒトリちゃんとダレカちゃん」という作品は、「One For All」というテーマの元、縁あって私が執筆させて頂いた。お話を頂いた当初は、Oneとは染谷のような存在、影響力のある人間のことだと思っていたが、そうではなく、私達一人一人のことだと気付いた。Oneは特別な存在ではなく、Allと同じように孤独で、弱く、くすぶっている存在なのだ。誰でもAllのために何かが出来る。誰でもOneになれるのだ。この作品から、Oneはヒトリじゃないということ、無力ではないということが、伝われば嬉しく思う。

今回の震災を経て、LIVEに来る方々は、本当に様々な想いを胸に抱えているはずである。それらを、LIVE開始前に何かを媒介として、同じ方向へと向けて、LIVEに臨んでいけたら。そんな想いから、目に見えるところ、見えないところでたくさんの試みが行われた。たくさんの人々が、今回のLIVEを作っていくのだ。染谷俊、バンドメンバー、制作、運営、そしてオーディエンス。色々な人の、色々な想い。それらが今回のLIVEツアーを通して、一つになっていって欲しいと、願う。

開演5分前。
会場はあっという間に埋まっていった。
ライブハウスに充満する、多くの人々の興奮。息遣い。期待。それらがある種、混沌とした空気を生んでいる。
混じり合って、どんどんと上がっていく、密度。
「染谷!染谷!染谷!染谷!」
待ちきれない会場からの、恒例の染谷コール。手拍子。
そして、17:30。定刻。
登場する、染谷俊。黒のタンクトップに、真っ白なシャツ。黒のパンツ。ブーツ。左腕には「かかってこいやー!愛」の文字。限界まで圧縮された密度が、染谷を照らすまばゆいライトの光で、弾ける。
混沌を、染谷の歌声が昇華させていくのだ。

染谷俊ツアー2011『One For All』
いよいよ、始まりだ!

1.うたうたい
この曲には、染谷俊というアーティストの信念、そして、今回のツアーテーマが込められているかもしれない。ただ騒いで、嫌なこと忘れちゃおう、というLIVEでは無いのだ。思うこともあるけれど、凹んでてどうすんだよ!俺らが元気になって、明日を明るくしていこうぜ!とでも言うような、彼の真剣白羽の心構えが込められている。
ジリジリと、震えるような旋律。ただ真っ直ぐに、胸に突き刺さる歌声。
一曲目にして、既に泣いている人もいる。発せられる音、それを伝える空気の粒子、原子の一つ一つに、染谷は魂を込めている。ライブハウスの空気が、明らかに変化している。そうして、そこに居合わせた人間に、呼吸を通して、染谷が侵入していくかのようだ。
ただ、引き込まれてしまう。染谷の演奏、歌声、真っ直ぐな瞳に。
歌いきると、割れんばかりの拍手が会場を包んだ。

「大阪—!歌いに来たぞーオラー!」
「みんなと、かけがえのない今日を、一緒に生きるために!」


2.It is time
3.Forza
4.Wa ha ha ha!
5.Pioneer
6.Revolution
さて、ここからはおもっくそライブを楽しみましょう。楽しむなら、本気で楽しみましょう!そんな染谷の声が聞こえてきそうな曲たちが並ぶ。
観客も、拳を突き上げる。歌う。叫ぶ。
染谷俊ライブに来るオーディエンスは、本当に熱い。染谷が本気なら、会場も、本気だ。ライブハウスの前から後ろ、すみからすみまで、楽しんでいるのが分かる。エネルギーが、ライブハウスに満ちていく。
 全力で楽しむ染谷。ドラムの佐治ちゃん、ベースのスティングさんも、そのずば抜けた演奏力で追従する。





7.魔法の言葉は Change
「燃えますね!…ちょっと休む系の曲やりたいと思います(笑)」
この染谷の一言から、一変して大ジャジーな一曲。
本当に染谷の表現力、演奏力の幅の広さには圧倒させられる。
アダルトな大人の魅力溢れる演奏に聞き惚れていると、、、知らぬ間に「サザエさんのテーマ」へと変化。染谷の遊び心を感じる。楽しませよう、一緒に楽しもう!という気持ちを、強く感じる。流れるように、サザエさんのテーマから、しっとりと曲の雰囲気へと引き戻す。甘く歌いあげる染谷。ラリルラ、歌えば心が、スキップするように。
しかしここでまた、染谷のひらめきが降臨!「ちょっとみんなと、歌いますね。」突如鍵盤ハーモニカとガムテープを持ち出し、マイクを鍵盤ハーモニカにくくりつけ…ようとするが、ガムテープが上手く付かず、一度失敗。照れ笑いしつつ、再チャレンジする染谷の間を埋めるように、観客が歌い始める。ララララ…。ほほ笑む染谷。つながっている。ライブハウスが一つになっている。



そして、即興で即席の染谷マイクによる演奏。鍵盤ハーモニを吹きつつ、そのまま歌も歌えるスグレモノだ。可愛らしくも、おしゃれな音にウキウキしていると、なぜか鍵盤ハーモニカバージョンでの、「サザエさんのテーマ」再び!そして会場も何故か、サザエさんのテーマをみんなで大合唱。さすが染谷ファン、ノリの良さも最高だ。そしてまた、最後はしっとりと、引き戻す。

染谷のライブはまるでテーマパークに居るようだ。色々な世界を見せてくれる。
ちゃんと観客をその世界へ連れて行ってくれる。一人残らず、置いていかない。

ここで、染谷のMCが入る。
「今日は本当にみんな集まってくれてありがとうございます。
久々にこの感覚、この感じが、嬉しいです。
なんだか、たくさんの出来事があって、普通に楽しんでたこととか、普通に盛り上がってたこととかも、
素直に出来ないような日々もあったりして。
お手紙にもそういうことを書いてくれる人たちも、たくさん居るんですけど。
自分もたくさん色々考えましたが、生きてる俺たちが、元気で、もっともっとまっすぐ
生きて、できること一生懸命やって、明日とか、未来とかにつながっていくような、
上を向いていく日々を、生きてかなきゃなぁというのが、本心です。」



「眺めていたい人も、久々に発散したい人も、体に正直に。」
「正直に、自分の大事な歌たちを、歌っていきたいなぁと。」

「今日しかないですからね、今日は。盛り上がりましょう!」

8.道端の歌
ホームページにもアップされていた新曲。ライブやツアーでやってほしい、というリクエストも上がっていた一曲だ。弾き語りで歌う染谷の姿には、神々しさすらも感じる。さっきまでワイワイとジャンプしていた会場が、水を打ったように静まり返る。身じろぎもせず、全身で聴いている。まばたきも出来ない時間。「今」を生きる、「今」を歌う染谷を見逃さないように、聞き洩らさないように。

9.絆歌
10.ヒーロー
11.情熱パンクス
12.完全燃焼すぴーど
13.365日、闘うボクラの ROCK
ノリの良い楽曲が続く。染谷も、観客も、飛ぶ。
ライブハウス自体が跳ねているようだ。会場全体に広がる、楽しさ。



染谷自身が、最高にライブを楽しんでいるのが伝わってくる。染谷の、この吸引力は、なんなのだろうか。あっという間に人の心を、空気を持って行ってしまう。鍵盤に飛び乗り、膝をピアノに叩きつける。拳を叩きつける。余力を残す気など、毛頭ない。髪を振り乱して、指を躍らせて、暴れる。はじけて、騒いで、光る。まるで予測不能の動きをするネズミ花火のようだ。次の瞬間に燃え尽きて、ぶっ倒れてしまうんじゃないか?そんなこちらの心配を、ンなわけねーだろと、いたずらに笑うように、染谷は歌う。楽しそうに、楽しそうに。

14.応援歌
15.ボクラのチカラ
 今回のLIVEツアーを表すような、ラストの二曲。染谷から、オーディエンスへ。オーディエンスから、ダレカへ。ダレカから、別のダレカへ。つなげていく。ボクラは繋がっていける。それがボクラのチカラなのかもしれない。
 
燃え尽きた。心地よい疲労感と共に、退場する染谷。もちろん、燃えカスも残らないほど燃えるのが、染谷俊の最大の魅力であるわけで、そのまま終わるなんて、誰も思っていない。続く、染谷を呼ぶ声。オープニングにも匹敵する、もしくはそれ以上に続く呼び声。染谷もまた、焦らす。もっと出来るよな?もっと燃えれるだろ?と。そして待つことおよそ5分、再びステージへと登場する。

1.グリーングリーン
2.ベストフレンズ
 アンコールの一曲目は童謡「グリーングリーン」のカバー。どこまでも快晴!といった気持ちよさ、爽やかさが、熱気のうずまくホールをリフレッシュさせてくれる。幅広い年齢層の会場が一つになる。そして、「ベストフレンズ」で、またもや熱気を取り戻す。くるくると目まぐるしく変わる音楽、テンション。何より、そこに居るだけで楽しい。今日のライブで一番会場の叫びが大きい。タオルを回しながら、みんな最高の表情だ。汗だくで、間違いなく「今」を楽しんでいる。「今」を生きている。こんな風に、繋がっていければいい。こんな風に、明日が明るく、爽やかで、澄んでいればいいのにと、切なさにも似た感情が胸を熱くさせる。染谷とオーディエンスを見ながら、素直にそう思えた。

 「想いを、話すように歌ってきたLIVEでした。まだまだ、俺らの人生終わりじゃないんで、
俺ももっと強くなるんで、一緒にまたこうやって、叫びましょう!」
「もう一曲、やりますよ。色んな場所で頑張っている人達へ。どんな場所であろうとも、
サポートしている人達へ。ひまわりという歌を、最後に歌います」
3.ひまわり
「頑張れ」と口に出して相手を奮い立たせるのが、なんだか申し訳無いように感じていたこの頃。そんな中で、染谷は力強く、歌った。「頑張れ」と、何度も、何度も。それは、決して押しつけじゃなく、他人事でもなく、彼が頑張っているから、こんなに胸の奥まで一直線に届くのだろう。涙ぐみながら、魂を削りながら歌う染谷を見て、自然と涙が溢れた。体中に、染谷の歌が、音楽が、魂が充満している。
この曲は開演の数時間前に演奏することが決定された。毎度のことながら、染谷のひらめきによるものである。しかし当日にライブハウスに届いた、染谷の同志ともいえる清木場俊介氏から贈られた花には、美しい向日葵が咲いていた。みんな、一つになろうとしているのだ。何も言わなくても、同じ方向へ向かっているのだ。ひまわりのように、太陽へと向かって、上を向いて進もうとしている。



演奏が終わると、会場から大きな大きな拍手が沸き起こる。バンドメンバーで手を繋いで、客席へと一礼。染谷は何度も何度も、深々と頭を下げ、会場へと投げキッスをした。手を振りながら、会場の一人一人を見つめるように、去っていく。幕へ入る直前、もう一度振り返り、拳で胸を叩いた。最高の笑顔で、退場。20:00。二時間半のLIVE、ツアー初日はこうして幕を閉じた。





エントランスに出ると、クタクタの人、泣き腫らした目の人、笑顔の人、たくさんの人が溢れていた。共通しているのは、みんな充実しているということ。たくさんの想いを吐き出して、受け取って、サッパリした表情をしている。開演前のインタビューで「染谷のLIVEは心の洗濯」と表現した人が居た。風呂上りにビールをグビグビーッと飲んで、「プハーッ!最高!」と言った爽快感が、ここにはあるのだ。そして「よっしゃ、明日も頑張りますか!」と思える。染谷俊は、LIVE後の空気感も、最高だ。

最後に、サイン会の列の方々に、またもや突撃インタビューを、一言だけ、敢行した。
『今日のLIVE、どうでしたか?』

「やられたー」
「超ハード!」
「初めてきたけど、めっちゃ良かった!」
「今の自分を反省させられた。変わろうと思った」
「染谷と一緒の時代に生きていて良かった」
「ありがとう。ほんまに、ありがとう」




 ありがとう。今日の二時間半で、染谷が何度口にしただろうか。そして、これから始まる全国ツアーで、何度口にするのだろうか。パワーのやりとり、心のやりとりを、何度するのだろう。溢れ出て有り余る彼の情熱は、どんなツアーを創造し、何を見せてくれるのだろうか。何を私たちに与えていくのか。染谷俊ツアー2011「One For All」。ツアーはまだまだ、始まったばかりだ。
文:小島双葉