染谷俊 TOUR 2011「One For All」

5/22(日)東京 Shibuya-eggman


両手足を床につき、肩で息をする。乱れた髪から、尋常でない汗が、とめどなく滴り落ちている。
身体中から蒸気がたっているようだ。
肉体も、精神も、魂も、全てを使い果たした人間はこうなるのか、と思った。
ステージを終えて、楽屋に倒れこんだ染谷の姿が、そこにあった。
まるで、今まさに命が尽きる寸前の、美しく、儚い、獣だ。
もう立てないだろう。もう立たなくていい。
絶句しながら、そう思った。

それでも、聞こえる。会場からは、彼を呼ぶ声が。
彼を必要としている人々から、とめどなく続いている。

そしてそれを、彼は誰よりも、必要としている。


 南から北上してきた、染谷俊ライブツアー2011「One For All」。前半戦の締めくくりとなる東京公演が、渋谷egg manで開催された。

 5月22日。当日、染谷ライブにしては珍しく、雨。次第に雨脚は強まり、気温もドンドンと下降。それと反比例するかのように、あっという間に人に埋め尽くされ、ドンドンと温度を上げていく会場。期待と湿気と興奮が、ホール内に渦巻いているのが目に見えるようだ。

 定刻より10分遅れ、17:40。「待ってたぞー!渋谷—!」という染谷の雄たけびから幕を開ける。こっちの台詞だ—!と言わんばかりの歓声と共に、いよいよ、ライブスタート。



 今回は、なるべくオーディエンスの傍からレポートしようとホールへと食い込んでいったが、開始早々、近寄っただけでジットリと汗が滲んでくるほどの熱気だ。ツアー開始以降、断トツの密集率。一曲目の「歌うたい」でガッチリ会場を掌握した染谷は、続けて「it is time」、「Forza!〜紺碧の空に矢を放て〜」と、物凄い勢いでテンションを上げていく。「PIONEER」を終えた頃には、流石の染谷も「はぁ・・・ヤバイ」と漏らしていた。が、続く「REVOLUTION」では、どこがやねん!とツッコミたくなるほどの威勢で、会場を煽る、煽る。染谷が「いつも大きなお世話になっている」メンバーも、ここまでのツアーの疲れを全く感じさせずに、共に盛り上げていく。



「道ばたの歌」のMCで、「曲の成り立ちとかは普段話さないんですけど」と前置きし、染谷は語った。

「この歌は、3月11日に大きな地震が起きて・・・少し経って、頑張れとか、立ち上がれとか言われだしたんですけど、正直自分の中では、まだ早いんじゃないか、そういう言葉をかけるべきじゃないんじゃないかなって想いがあって。そんなにすぐに、傷は癒えないんじゃないかなって。そう思ってた時に、テレビの中で、なんもなくなっちゃった校庭の横っちょで、腰かけてた女の子達の後ろ姿が映っていて、あぁ、この子たちにも恋とか夢とかあったんだろうなぁって感じて。その姿にかけられるような歌を書けたらいいなぁと思って、書きました。」

染谷のライブを観ていると、改めて音楽の持つ力に気付かされる。私たちは時として、贈る言葉が見つからないことがあり、無力さに打ちひしがれることがある。そんな時に、人は音楽を必要とするのかもしれない。綺麗事じゃ伝わらないけど、まっすぐ過ぎる言葉は、時として人を傷つけるから、音楽で言葉を包んで、優しく手渡したい。今のような状況だからこそ、それを必要としているのかもしれないと感じた。

今回のライブは、会場だけで無く、ステージに居るメンバーも本当に楽しそうだった。アンコール二曲目で演奏された「JUMP」では、「高校生のライブみたいになってしまいましたが(笑)」と染谷が語ったように、正に十代のようなエネルギッシュさと、若さと、やんちゃさが音に滲み出ていたように思う。明日のことより今を楽しんで、今を生きていた十代を思い出すような弾む音。



そしてアンコールの最後は「ベストフレンズ」。余力を残すことなく、歌いきる、伝えきる。割れんばかりの歓声と拍手と共に、退場。

 今日も彼は生ききった。ぶっ倒れている染谷の姿は、感動と共感と反省とを混ぜ合わせたような想いで私の胸を満たし、熱くさせた。そして、会場から聞こえるダブルアンコールの叫び。正直、初めて目の当たりにする染谷の姿に衝撃を受けていた私は、無理だと思った。これ以上ステージに立ったら、本当に燃え尽きてしまいそうだったから。

それでも、目の前の美しく儚い獣は、立ち上がった。キシキシになりながらも、濁りの無い瞳でステージを見つめながら。染谷が激しく脈打つ心臓なら、オーディエンスの声は血液かもしれない。どちらも欠かせないし、そしてどちらも、互いに生かされている。三度ステージへと姿を現した彼の笑顔を見ながら、そう思った。ダブルアンコールの曲目は「きみが僕にくれたこと」。最後の最後の最後まで、彼は歌いきった。



ライブ終了直後に外へ出ると、汗ばんだ身体を、冷たい空気がクールダウンしてくれた。

そうか、雨の理由は、こういうことだったのか。

生きていく上で理不尽なことは山ほどある。
望まない事柄や、理由の無いことだってたくさんある。
それでも、今日のライブには確かに理由があった。
その理由はそれぞれみんな違うだろう。
ライブを見に来る理由。
拳を上げる理由。
叫ぶ理由。
笑う理由。

そうしてそれらは、明日を生きる理由になるのではないか。

笑いたいから。
叫びたいから。
また一緒に、歌いたいから。
一つ一つの理由が、明日からの自分を作っていく。

それも、「One For All」なのかもしれない。

霧雨に身体を冷やしながら、そう感じた。



これからライブツアーは北へと歩を進める。その行き先には、理不尽なこと、理由の無いことが、多分たくさん溢れているだろう。もしかしたら、そこで理由は見つからないかもしれないけれど、与えられないかもしれないけれど、それでも、染谷の音楽が持つチカラ、ボクラのチカラが伝わる、そんなライブツアーになればいいと、私は願う。



1. 歌うたい
2. it is time
3. Forza!〜紺碧の空に矢を放て〜
4. Wa Ha Ha Ha!
5. PIONEER
6. REVOLUTION
7. 凛
8. 道ばたの歌
9. 花びら
10. ヒーロー
11. 情熱パンクス
12. 完全燃焼すぴーど
13. 365日、闘うボクラの ROCK
14. 応援歌
15. ボクラのチカラ

EN1 グリーングリーン (カバー)
EN2 JUMP
EN3 ベストフレンズ

EN4 きみが僕にくれたこと


文:小島双葉