朝は、なかなか動けなかった。
目が覚めて、まだ眠いなぁとまた寝て、
そろそろ起きなきゃと目を覚まして、でも、また眠ったりした。
時計を見ると、10時半だった。
そりゃ、あんだけの距離をいつもと違う車で運転してきたんだもん、
しょうがないよ・・と、
自分に言い訳をした。
旅の片付けをしなきゃと思ったけれど、
手をつける気持ちにならずで、
それより体を動かしてみるかと、筋トレやら、ランニングをした。
30分ぐらい走ったら、
なんだか「やってる!おれ!」な気持ちになって、
その後、新曲たちのデモテープを聴いたり、
細々とした片付けなんかをした。
そんな、旅から帰ってきて一夜明けの今日。
昨日の旅からの帰り道は、夕暮れ時をすぎていたせいかもしれないけれど、
とてもせつなく、あぁツアーが終わったんだなぁという気持ちが胸いっぱいに広がった。
この時代、
この季節、
歌ったことは、忘れないように、
ここに記しておきたいと思った。
いろんな想いがあった。
迷いそうな時は、自分の気持ちに正直になってみた。
それ自体が、正しいか間違いかわからないけれど、
正直な心に向いてみた。
そして、歌った。
ステージから見つめた風景を忘れないだろうと思う。
ステージに立った時の気持ちも、忘れないだろうと思う。
ライブハウスの店長さんが、
「こんなにたくさんの方たちが配信を観てくれてる・・って、
あんまり、うちでは経験したことなくて。
すごいですねー。嬉しいですよねーー」と言ってくれた。
その言葉も嬉しかったし、
配信でもつながってくれたみんなの気持ちが、
本当に沁みた。
旅の始まりにも、いろいろあった。
静岡あたりで車の調子が変だなぁと思い、
サービスエリアのガソリンスタンドで見てもらい、
これはやばいかもなぁと、今回いろいろと手助けをしてくれていた溝手くんに電話して、
修理屋さんを探してもらったりして、浜松で一度高速を降りて、修理屋さんで一応見てもらって。
「ちょっと原因わからないなぁ。
でも、小さな原因ではなさそうですよ。下道で行ったほうがいいかもですよ」
・・というアドバイスをいただいたけれど、
さすがに浜松から京都までの道のり、下道での移動は一日じゃ無理かもと、
再び高速道路に乗った。
名古屋をすぎて、伊勢湾岸道、三重の始まりのあたり、
高速道路の上り坂の途中からエンジン音が大きくなって、
上がりきったあたりで、急に車が減速し始めた。
アクセルを踏んでも踏んでも、スピードは減速していった。
トラックに後ろから突っ込まれるなぁ、これだと・・と、
なんとかアクセルを踏んで、路肩まで行って、停めた。
ボンネットの中から、鈍い、うなり声のような音が聞こえていた。
火でも出るかもなぁと思った。
終わったなぁと思った。
車から降りて、
ビュンビュンと横を走り去るトラックたちをよけながらガードレール内に入って、
そこで、SOS電話から、車が止まってしまったことを告げた。
そこから、レッカーが来るまでの間、2時間ぐらい、
その場所で、携帯電話で修理工場を探したり、保険屋さんとの交渉をしたりした。
ツアーも中止にしなきゃならないなぁと覚悟もした。
スタッフの伊藤くんにも、中止の可能性もあるよと伝えた。
車の真横をかなりのスピードで通る車たちを見ながら、
衝突されて、巻き添えをくって、ここで死ななきゃいいなぁとマジで思った。
やがて夕暮れの頃、レッカー車がやってきて、
車を積んで、一番近くの出口から降りて、修理工場へ向かった。
「うちじゃこれ、直せないわ・・・あ、ちょっと待て、後輩がいる!
あそこだったら、でかいコンピューターで修理できるから、
ちょっと聞いてやる!でも、もう帰っちゃってるかも。つながれ、つながれ!」
と、修理屋のおじさんが電話をかけてくれた。
つながった。
奇跡のようだった。
そのままレッカーの方が車を乗せたままで、その別の修理工場まで行ってくれることになった。
修理工場には、おじさんの後輩の方がいらして、
「いろいろ、聞きました!ウチであずかりましょう!」と言ってくれた。
乗ってきた故障した車には、ツアー用の2台の大きなピアノを積んでいた。
「このピアノたちを乗せられる車、どこかで借りれないですかね・・・
ないと、この後のツアーを中止にしなきゃいけなくなってしまうんですけど」
と伝えると、
「大丈夫です!ウチのレンタカーのほうにあるやつ今から手配しますから、乗っていってください」と言ってくれた。
まだ終わらせなくていいんだと、
本心、本当に嬉しくなった。
まぁ、目の前の故障には呆気にとられて心も少ししょげていたけれど、
死ななかったことと、ツアーを中止にしなくてもよくなったこと、
このふたつだけで、十分、チカラが沸いた。
・・・と、
そんな、旅の始まりもあった。
この一連のことについても、
ここに記しておこうと思っていた。
「それ」が正しいか、「それ」が間違いか、
その選択も確かに大事だけれど、
何があっても進んでいかなきゃいけない時もある。
「それ」が不安でも、「それ」が悲しくても、
何があっても、行かなきゃいけない時がある。
そんなことを、
今回のツアーでは、たくさん考えて、たくさん思ったことだった。
染谷俊自体が、「終わります」と言わなければ、
染谷俊は終わらない。
たとえ誰かが、「終わりだよ」と自分に告げても、
自分が「終わらないです」と決めて進めば、
まだまだ、道は終わらなく、続いていく。
だから、
進んでいかなきゃと思う。
創造し続けていかなきゃと思う。
どんな形でも、どんなザマでも、
繰り出し続けていかなければと思う。
「ガタがきてるのも知ってんだ」・・なんて歌った、
あの歌が、ちょっと今日はよぎった。
旅中にやってしまった右腰をかばっていた左腰が今日は痛んだりもする。
またかよ・・・とひとり笑ったりもする。
で、また、
歌がよぎる。
”やれることがいっぱいある まだ したいことがいっぱいある。
傷ついても つまづいても 怪我しても ひざまずいても
相棒 思いきり 暴れたい おまえと出逢えたこの人生。”
なんてな。
まだまだ、終わらせない。
・・・・・・
たくさんの人たちに救われた。
たくさんのスタッフに助けられた。
たくさんの人たちに想いをもらった。
そんな、
"真夏のチーム"ツアーを終えて。