池尻大橋でライブだった。
誘っていただいての、始めてのライブ場所にてライブ。
この日があってよかった・・っていうライブだった。
池尻大橋は、7年間通ってた街。
所属していた事務所があった。
ほぼ毎日といってもいいぐらい、事務所に行っていた。
「自分のことは、全て自分で」が基本理念の形で事務所と契約していた。
なので、グッズのデザイン、ライブスケジュール&行程、ホームページの内容やデザイン、
バンドメンバーにお支払いするギャランティー、レコーディングの方向性や収支、
そういう全ての事柄に口を出させてもらい、自分でも動いた。
歌っていくために、どう開拓するか、関わる費用などをどう捻出していくか、
何を守り何を削ぎ落としていくのか、
そういうことのほとんどを、この事務所で学び、教わり、身にしていった。
事務所の窓からは、目黒川と、その川に架かる小さな橋を見ることができた。
作業が長引いて徹夜した朝には朝の橋を、
作業に煮詰まって月さえも消えた夜には夜の橋を、
ぼっーと眺めては色んなアイデアを頭の中でぐるぐるさせていたあの頃のことを、
昨日は、ふと思い出した。
ライブが終わって荷物を取りに駐車場に向かう時、
少し遠回りして事務所があった場所へ歩いた。
今はもう、その場所に事務所はないけれど、なんだか久しぶりに帰ってきた気がして、
あの、何年も前にここにいた自分と今の自分はそう変わってないのかなぁなんてことを
思ったりした。
いや、確かに、変わってはいるのだけれど。
雨が降る街の風景は、その雨のせいもあってか、滲んで綺麗に見えた。
この街にいた時代があったからこその、今の自分がいる。
胸にこみあげた小さな言葉を呟いてみた。
「・・・・」
歌うためにいろんな街へ行って、
そこで新たな出逢いにときめいたり、時には懐古したり、
そうして、また次への歌が生まれる。
残してきた歌たちへの感情が再び生まれたりもする。
歌い生きながら、
自分は道を切り拓いて、耕して、跡を残して、
今ある足元に続く道を作ってきた。
きっと、止まらないかぎり、
道はずっとずっと続いていく。
そんなことを、ワイパー越しに思った帰り道。
そう、
昨日は、本当に、
この日があってよかった・・っていう、日だったのだ。