2011-03-26 Sat

スタジオ通いや夜更かしのためか、目が覚めたのは10時すぎだった。
ぼんやりと椅子に腰掛けて頬杖をついて、カップに昨日入れたコーヒーの余りを注いで、
冷たいまま飲んだ。
何分か、いや、一分も経っていなかったかもしれないけれど、
時間の中に住む仙人のような老人に「ほらっ」と頭を叩かれたかのように、「なんか動かなきゃな」とふいに思って、
昨夜遅くに帰ってきたまま床の上に放りっぱなしにしてあった鞄の中からスケジュール帳を取り出して、
今日やろうと思う事柄を思いつくままに書いた。被災のために品切れで買えてなかった物たちも含んだ
買っておかなければいけない物たちも一緒に書き連ねた。
ずいぶんと、「今日やろう」と思う事柄があることに気づいて、とりあえず、買い物からするか・・と、
何週間か節電のために暖房を消してある部屋の中で着ているベンチコートを羽織って、外へ出た。
何日か前にTVで観た、「花粉や黄砂が大量に飛び回っているここ何日間です。都内のあるビルの屋上では、
屋上に積もったオレンジがかった黄砂を、放射能のせいで何かが降ってきたのかもしれないというふうに勘違いをした
住人の方が、消防車を呼んだということです・・」というニュースキャスターの顔をぼんやりと思い出して、マスクもした。
外はとても強い風が吹いていた。空はとても晴れていた。風のせいだけじゃなく、
その白い日差しの眩しさに目を細めた。


お店に行くと、先週品切れになっていた物たちがたくさんあった。
けれど、まだまだ品切れのまま、空のままになっている棚もたくさんあった。
今この時買いだめをしてしまう人々の気持ちはわかるけれど、それでも、それは、「違うんじゃないかな」と
思う自分がいる。
聖者でもない自分が言うのもなんだけれど、何かが見えていなく何かが足りていない、そんな行動のように
思えてならない。
でもな・・大家族を抱える家庭であれば困窮する問題でもあるわけだしな・・・とかなんとか、
何も語らない空の棚を見つめつつ、色々と考えた。
ガソリンスタンドは、まだ開いていなかった。
スタンドの入り口にはロープが張られていた。無人で無言のガソリンスタンドも、何か言いたげに見えた。


信号につかまって、向かいの通りを見たら、大きなラーメン屋さんがあった。
そういえば腹減ったなぁ・・と思ったけれど、ポケットの中に本は一冊も入っていない。
僕は1人でラーメン屋さんに入る時には、本か漫画か、あの待たされている時の手持ち無沙汰を
解消してくれるものを何か持って入る。
食べたいけどなぁ・・とまた視線を映すと、そのラーメン屋さんの2軒隣りに古本屋さんがあった。
ラッキーちゃちゃちゃ、うぅ!と思い、そこで本か漫画を買って、ラーメン屋さんに入ろうと決めた。


古本屋さんにはたくさんの子供たちがいた。小学生か、中学生か、みんな、漫画コーナーで1人の世界に
こもって、立ち読みをしていた。「上野の立ち飲み屋みたいだな」とか思いつつ、僕も漫画を捜すことに
した。
先日、「絶対読んでくださいよ!そこには、友情とか優しさとか人間が生きていく上で大切なことが、
いっぱい書かれてるんです!」とあるスタッフから薦められていた漫画のことが実はずいぶんと気になっていて、
機会があればそれを購入しようと思っていた。
けれど、いざ捜し始めると、「よし、捜すぞ!」という意志はそれなりにあったのだけれど、
漫画コーナーにある漫画たちはどーんとお店の真ん中、お店の3分の2ほどを締める場所に4列か5列かになる
本棚いっぱいに並んでいて、途中でその漫画を捜すことが面倒くさくなってしまった。
捜し物を途中でやめる自分の意志の弱さにちょっと腹を立てながらも、
「初めにここに入ったのは漫画を捜すという目的ではなく、ラーメン屋さんに入ってラーメンが出てくるまでの
時間に何となく読む本を捜すためだったんだ」と、気持ちを切り替えて単行本のコーナーに行った。
漫画コーナーとは違い、ずいぶんと淋しげに、かつ、無造作に並んだお店の端っこにある単行本のコーナーは、
気まぐれ、かつ、ラーメン屋に入るための本を捜している自分には似合っていると思った。
それでも、いざ、何にしようかなぁ〜と並んでいる本たちのタイトルを見ていくと、実にトキメクものが満載で、
「やばっ!たかまる!たかまるぅ〜!」と、まるで高校生の時に古本屋さんに入ってビニールにくるまった
エロ雑誌をドキドキしながらコソコソと、しかし情熱的に見つめていたような、あの時のような気持ちになった。
結局、武士についての100円の本と、哲学の100円の本と、他人に言えない恥ずかしい話を集めた本シリーズの
お得な2巻セットで300円のやつを買った。
ラーメン屋さんでラーメンが出てくる時間で、この4冊の本を絶対に読み終えられるはずがねーよな・・と、
レジでお金を払う時に思った。


ラーメン屋さんは、とても賑わっていた。
家族連れや、カップル、そして店員さんたちも何人もいて、大袈裟じゃなく、祭りのように盛り上がっていた。
ここ何週間かの、内に向いていた生活から、少しは、前へ向いての生活に人々もシフトしていってるのかなぁなんてことを
思った。そういえば、昨日の夜の街も、ずいぶんと人が出ていたように思う。
店員さんたちは、元気な人たちばかりだった。きっと、そういう教育をしっかりとされているのだと思う。
「いらっしゃいませ!」「ありがとうございます!」「なにかあったらお呼びください!」という、かけ声一つ一つが、
嫌みがなく、爽快で、心がきちんとこもっているように響いた。
たんなる1人の未熟なおっさんな自分が言うのは厚かましいことだけれど、こういうことが人の気持ちに響くんだよなと思った。
この店がひとつになって、多分、大きな目標を持って、その中で教育や学びがおこなわれ、皆で前を向いている、
そんなチームワークがひしひしと感じられるお店だった。「すばらしいやん」。


僕は、辛いラーメンを頼んだ。そして、携帯電話でメールをチェックした。それと、毎日食べたものを写真で撮影して
摂取カロリーを書き込むアプリを立ち上げて、メニューに載っている自分が頼んだラーメンの写真を撮影したりした。
そして、古本屋さんで買った本たちを袋から取り出そうとしたその時、
「お待たせしました!!」と、元気な声で、ラーメンが僕の目の前に来た。
早いですよね、ずいぶんと、本当に早いですよね。3分も経ってないですよね。確かに九州ラーメン的な麺細の、湯で時間も
多分ちょー早いのはわかるんですけど、ずいぶんと早いですよね。まだ、さっきラーメン屋さんに入ってラーメンが出てくる
までの時間に読もうと買った本たちを袋から出してもいないんですけどね。・・・
というような思いが、頭から天井に向かってシャボン玉のように消えるような感覚を味わいながら、ラーメンを食べた。
ラーメンは、様々な思いを吹っ切ってくれるかのようにとても辛く、美味しかった。




家に帰ってきて、今日をやろうと書き連ねた事柄を一つ一つやっている。
そして、また、冷たいコーヒーを飲んで、何気なくPCを開いて、これらの文字を書いている。
ふと、数日前に読んでいた本の中の、小説家の言葉を思い出した。

「物書きの役目は、単一の結論を伝えることではなく、情景の総体を伝えることにあるのだから」という言葉。

とても興味深いし、歌を書く自分にとっても、深く考えさせられる言葉だった。

違うページでは、多分同じような事柄を言いたくて(これは僕の感じたことだけれど)、
こんなことが書かれてている。
(以下は、その小説家の方が言った言葉を僕なりに解釈して、やや僕が書き換えたものだけど)

・・物語り(小説)は、風である。
その風に揺らされる葉っぱや、何かがあって、初めて、風は目に見えるものとなる・・・
(感じる人がいてこそ、感じた人たちの心が揺れて、初めて、物語は目に見えるもの、形として刻まれるものとなる・・)


                      
                           ☆

そんなこんな、
冷たいコーヒーとともに書き始めた行為はやめて、
また、スケジュール帳と約束した事柄を始めようかと思う。




| 16:24 | CATEGORIES:スケッチ |
2011-03-25 Fri


突然の別れが昨日あった。

人と人、ずっと一緒にいれるなんてことはないことを、色んな別れの中で知った。
永遠なんてものは、ないに等しいということを、もう心の奥では知っている。

けど、
やっぱり、
別れを目の当たりにすると、

誰もいない野原の中でぽつんと1人で立っていた、
あの子供の頃の記憶に似た感情が胸に広がって、まぶたが熱くなった。


たくさんのことを教えてもらったな。
言葉とか、気持ちとか、歴史とか、音楽とか、本当にたくさんを教えてもらったな。
うまくわかりあえないこともあった。
っていうか、僕の伝えた方の下手さで、すれ違ったこともあったっけ。
もっともっと話したかったこともあった。
もっと伝えたかったこともあったよ。
あなたが笑うと、なぜか、とてもあたたかくなった。
あなたが悩んだ顔を見せると、それが何かを妙に知りたくもなった。
あなたのつたない言葉の奥にある思いが何なのかを、知りたかった日もあった。

もっともっと、一緒にいたかったよ。
もっともっと、笑い合っていたかったよ。
もっともっと、同じ時を過ごしたかったよ。


一瞬一瞬、
ぼくらが当たり前のように過ごしている日々は、

本当は、
当たり前になんかしちゃいけなく、

本当に大切な時間なんだね。


出逢えたことは、
本当に、
素晴らしい出来事だったんだ。


いっぱいを、ありがとう。
本当に、
あなたと逢えて、良かった。


さよならを言うのはやめる。
また、いつか。

そう、

同じ空の下で、
いつか、
いつかどこかの、時間の交差点で逢える日を思って、
それぞれの道を歩いていようぜ。

元気で。


| 18:04 | CATEGORIES:I appreciate it |
2011-03-25 Fri

読んだ本を僕は売らない。
この時代だから、マーケティング&ネットワークされた古本屋さんに
売ればいいのに〜>>>という思いに同意しつつ、僕は売らない。

読んだ本のほとんどに、その時の想い出と思いが重なるからだ。

煮詰まっていた時に読んだ本。
詩が書けなくて言葉をむさぼるように読んだ本。
父親の入院していた病室で時間潰しに読んだ本。
ある人に薦められて読んだ本。
あの時の赤坂で、あの時の代々木上原で見つけた本。
新宿のBARで待ちぼうけ食いながら読んだ本。
もらった本。
捨てられなかった本。

結局は、僕の部屋の壁のほとんどが、本棚で埋め尽くされている。

ふと、
今日、
それらの本の何冊かを引っぱりだしてきた。

フィッツジェラルド。
カポーティー。
真木健一。
ニーチェ。
村上春樹。
ゲーテ。
銀色夏生。
鷺沢萠。
ケルアック。
重松清。
ジョン・トッド。
山田詠美。
中上健次。
大江健三郎。
うわー、
ふるっ。
・・・なんて思いながら、
最近の著者を捜したけれど、
あんまし、いない・・。
いつかの、蹴った背中だか、蹴られた背中だか、
そういった名前の芥川賞とったやつのところから、
現代文学がとまってるかも...

なんてこと思いながら、
やためったら取り出してきて、
やたらめったらページをめくり、
やたらめったら、ウンウン、うなづく時間。

幸せだったなぁ。


そんな、今日のあるひととき。


おれらが生きていられる時間て、
あと何時間あるんだろう。




| 02:11 | CATEGORIES:スケッチ |
2011-03-23 Wed
本を読んだ。
気づいたら朝になっていた。


聞いているようで、聞いてない人が、なんとたくさんいるか。
感じているようで、感じていない人が、なんとたくさんいるか。

そんな言葉が綴ってあって、
まったくだなぁ・・と思った。

この人・・今おれの話、聞いてないだろうな・・なんてこと、あったりするもんな。
話しの途中で手が動いたり、視線がどこかにあって揺れていたり。



クラクションや飛び交う会話に溢れる雑踏の中で、
耳を澄ますように、心をそこだけに寄せて、
囁きのような呟きにある本当に大切なことを、
強いていえば、呟きに隠されている本当に「その人」が伝えたい本心を、

時の川の流れに流されていく大切な物を必死で網ですくうかのように、
そんなふうに、
そんなふうに、

会話ができたらいいな。

そんなふうに、
大事な人の言葉をすくっていた季節があったよな・・
なんて、
本を読みながら、記憶の中にある、雑踏の中の蒼の僕の姿を浮べたりした。



人の感覚や感情を、なめちゃいけない。
そんなに人は、馬鹿じゃない。

人は、
感じて、生きている。

そうだな、
感じているやつは、感じている。
聞いてるやつは、聞いている。

その、
一粒の、
何気ない、
心ない、愚かな一言さえも、

見つめているやつがいる。



| 14:45 | CATEGORIES:スケッチ |
2011-03-22 Tue
感情の墓場に、
感情を眠らせたり埋めたりすることに、
どうしても慣れていかない自分がいる。

慣れたくないというのが本心かもしれない。

いろんなやっかいな感情が体内で闘ったり、
僕を見つめたり、
問いかけたり、
そっぽを向いたり、
地団駄を踏んだり、
心をひっかいたり、
外へ飛び出したがっていたりする。

やっかいだな・・なんてことを思うけれど、
そのやっかいな感情たちでできあがっているのが、
まさに、僕なのだ。


行き場のない感情だらけの胸を押しあけて、
それらをぎゅっとにぎりしめた後に、
白紙にまき散らしたものを見てみたい。


なんてことを思いながら、
今日も僕は、
それらをノートに書いたり、
頭の中に浮べて鍵盤を奏でたり、
そんなことをして、
音さえ聴こえない時間の海の深くで静かに泳いでいる。

| 14:50 | CATEGORIES:スケッチ |
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